鶏と麦の宴 2016。今年もありがとうございました。

…家族をいただく。

今回の鶏と麦の宴に参加した皆さんが絞めて食べた鶏は
家の中で我が子と一緒に暮らしていた鶏だと
奥さんのトモちゃんが、宴の最後に話してくれた。

鶏は、雄と交尾しなくても無精卵を産む。
雄がいなくても、卵はいただくことができる。

だけど、オスのいないメスの鶏たちは、すぐ弱いものを虐めたり、喧嘩したりするのだそうだ。
オスがいることで、調和して、穏やかになるのだという。

オスは、夜明けになると
コケコッコーとなわばり宣言や求愛を大きな声で叫ぶ。

これが、近所迷惑だと言われたため、いったん、雄と引き離したのだけど
やっぱり、鶏の気性が荒れてしまい

絹田ファミリーは
今の下條村に移転した。

毎日の作業と引越し、子育てに追われて
新しい鶏舎がなかなか建てられなかったとき
絹田ファミリーと同じ屋根下、隣の部屋で、鶏たちは暮らしたのだそうだ。

動物が大好きで、子供の頃に獣医になろうと思っていた奥さんのトモちゃんは
動物と共に生きたいと思い、同じ大学、同じサークル(牛飼いのサークル)だった旦那さんと畜産を目指した。

鶏、猫、犬、やぎ。お野菜も同じひとつひとつ、大事に可愛がって育てたいのちだという。

トモちゃんは、鶏を絞めながら
『よく頑張ったねぇ、ありがとうね。』と何度も、何度も呟いていた。
わたしは、最後まで鼓動の響きがなくなるまで、両手で抑えた。

想い出すと
今だって、泣けてくる。
鶏のいのちのスープは、とてもとても、美味しかった。

『我が子のように可愛がってきた鶏のいのちが、
皆さんのカラダに変わるだけでなく
皆さんの心にも、このいのちが残せたことを
本当に、有り難く思います。』

と、トモちゃんは、話してくれた。
トモちゃんの涙を見たのは、初めてだった。

それまで誰かが大事に育てた家族と言えるひとつのいのちを
自分が生きるために食べる。
もしかしたら、近い将来は、自分育てた大事ないのちを
食べるときが来るかもしれない。

これは特別なことではなくて、当たり前なこと。

これからも、泣けるほどに美味しいということを
何度も、ちゃんと想い出して生きたい。

目の前の景色が変わると、忘れてしまうものだから
年に一度。この時期、ここでしかできない、特別な食事を
これからも、続けていこうと思う。

皆さんも、ぜひ。
大事な人と、ぜひ。

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